柿の木日記・
アウトリーチプログラム

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2018年12月12日(水)

「三浦一馬 タンゴ・セレクション~古典タンゴからピアソラまで」 三浦一馬さんインタビュー(2)

「三浦一馬 タンゴ・セレクション~古典タンゴからピアソラまで」
インタビュー②

2019年2月24日(日)大ホール公演にご出演いただく、バンドネオン奏者の三浦一馬さんに共演者のみなさんについてお話をうかがいました。

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Q:今回の共演者のみなさんについて、お聞かせください。
A:今回の共演者の中でも一番古くからずっとお世話になっているのが、ヴァイオリンの石田さんです。僕が2007年にオーケストラデビューをさせていただいたのが、石田さんがコンサートマスターを務める神奈川フィルでしたので、その時からお世話になっています。
石田さんをはじめ、これだけ一緒に演奏をさせていただいていて、楽しくてそして深いところまで音楽的に入り込める共演者ってなかなかいないですよね。心から信頼している方々ばかりです。

ピアソラの音楽はやはり特殊ですが、長い時間を掛けてピアソラらしさや、タンゴにおける特殊奏法といった色々なものを修得されていて、タンゴ奏者さながらの演奏をされています。僕はクラシックのフィールドにいさせていただくことが一番多いのですが、色々な音楽家の方との出会いも含めて、自分としても居心地がいいと感じています。そういうクラシックの場にいながらも、やっているものはタンゴなので、今日話しながら気付きましたが、「ブレンド」がテーマになっていると思いました。ピアソラ本人やピアソラの楽団によるこれぞタンゴというような自作自演の演奏があり、片やクラシックのアーティストであるヨーヨー・マやクレーメルのような表現もあり、両方の良さがやっぱりあります。この両方の良さを色々なところから吸収できないかと思うのですが、そういう良さ、そういうサウンドを共に作っていただける方々です。

石田さんは僕にとっては本当にカッコいい兄貴のような存在です。音色の美しさと、ピアソラを弾かせたら天下一品ですからね。ご自身でもトリオ・リベルタなどでピアソラを弾いていらっしゃるという経緯もありますが、一番信頼しているヴァイオリニストです。
楽譜に書ききれないところ、文章でいう「行間を読む」ということだと思いますが、それを色んな表現方法を駆使してピアソラらしく、時にピアソラのオリジナルを越えているんじゃないか、と思えるくらいに弾いてくださっているというのは、本当に感謝です。

山田さんは何と言ってもご一緒している時のあの安心感です。山田さんとステージに乗っているだけで、僕は安心しきって大船に乗ったつもりで弾けるんですよね。バンドネオンは前を向いているので、後ろにいるピアノは見えないんですが、全て後ろから包み込んでくださるような、お人柄も含めそんな温かさを音からも感じます。山田さんのお話をする時によく表現することなんですが、山田さんは父性的というか、父親らしさのようなものを僕は感じています。
ピアノはタンゴの中でも特に核となる部分を担っています。バンドネオンの音やヴァイオリンのメロディーはもちろんなんですが、すごく低重心の音楽で、車でいうとドイツ車みたいな馬力があって、走れば走るほど地面に吸い寄せられていくようなそんなイメージを僕はピアソラやタンゴに持っているんですけれど、そういうのを支える上でピアノは重要な位置を占めています。はっきり言いますが、僕は山田さん以上のピアニストを知りません!

2012年に初めて「オール・ピアソラ・プログラム」の公演を実施しました。その時は、バンドネオンのソロから始まり、その次に弦楽アンサンブルとバンドネオンというクラシカルな編成、そして第2部はキンテートというスタイルで聴いていただきました。その時に初めてコントラバスの髙橋洋太さんにご一緒していただきました。
シンプルなものをすごく華やかに見せる、あるいはその真逆で、すごく難しいのにさらっと弾くという感じで、聴いてて見てて面白いです。タンゴやピアソラのコントラバスはある種パーカッションのようなリズムセクションのような役割も担っています。リズムなんだけれども、それだけに終わらず、音色が乗っている。コントラバスがメインを取るような曲も近年弾いていただいていますが、何と言ってもテクニックがすごいです。
ピアソラオリジナルの音源を聞いていて「ここはコントラバスがどう弾いているんだろう。よく聞こえないな」というところが、バンドネオンを始めたころからずっとあったんですが、洋太さんの音を聞いて「あー、そうなってたんだ!」と初めて分かったり。

髙橋さんのお話もしつつギターの大坪さんにも関わってくるんですが、お二人ともどうやったらピアソラの音に近づけるかということをすごく研究してくださっています。楽器をアップデート、アップグレードしてくださるんですよね。お蔭で、更にタンゴの要であるベースラインが効果的になっています。それは本当にありがたいなと思っています。ただ、あんまり凝りすぎて散財しないように、というのが心配な所ではあるんですが。(笑)

大坪さんは元々エレキギターから始められ、その後すぐにクラシックギターになり、近年は現代音楽もよく弾かれています。最初にご一緒したのは2010年から2011年くらいで、当時はあまりキンテートで演奏していなかったのですが、急遽演奏することになりお引き受けいただきました。それ以来ずっとお願いしている、最初からの固定メンバーともいえる方です。
大坪さんもすごくよくタンゴでの表現を研究してくださっている上に、練習魔なんです。特に今回のCDのレコーディングでは、クラシックギターとエレキギターを演奏していただいています。クラシックギターは指のみで演奏するので、ピックは使いません。エレキギターとクラシックギターは、ネックの太さも全然違うし、弦を押さえる圧力や力も全然違います。前半の古典タンゴではクラシックギターを使い、後半でエレキギターを弾くため、その違いに慣れるために、わずかな休憩15分20分の間だけでもずっと練習しています。レコーディングの前には、ピックを使いこなすために半年以上かけて練習してくださったそうです。大坪さんが更に楽器やケーブルなどにもこだわり始めまして。説明していただいてもなかなか難しいのですが、音を聞くと確かに変わるし、その差は歴然です。
というように、皆さん研究熱心で、それに裏付けされたスキルとセンスを持っていらっしゃるので、すごく心強いです。

Q:最後にお客様にメッセージをお願いいたします。
A:この公演では、僕が本格的にキンテートという5人のスタイルを始めてからの、色んな歴史を辿るようなレパートリーが散りばめられています。古典タンゴだけに留まらずもちろんピアソラもあり、僕自身の、我々自身の歴史であり、タンゴという音楽の流れ自体をも辿るようなプログラムになっています。ですから、我々も弾きながら思い出すこともあったりするでしょう。また、今回僕の演奏やタンゴを初めて聴いてくださるという方に「こんな世界があるのか、こんな音楽があるのか」ということを感じて知っていただけたら、本当にこれ以上の幸せ喜びはありません。ぜひお越しいただきたいと思っております。

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信頼するメンバーと共に奏でる、三浦一馬さん渾身のプログラム。
タンゴの世界を存分にお楽しみください。

【公演情報】
三浦一馬 タンゴ・セレクション~古典タンゴからピアソラまで
日時:2019年2月24日(日)15時開演
会場:めぐろパーシモンホール大ホール
出演:三浦一馬(バンドネオン)/石田泰尚(ヴァイオリン)/髙橋洋太(コントラバス)/山田武彦(ピアノ)/大坪純平(ギター)&スペシャルカルテット
チケット料金:全席指定 一般3,500円/学生1,000円
※目黒区民割引は一般より500円引き
※車椅子席はホールチケットセンター電話・窓口のみ取扱い
※中学生以上の学生券購入者は入場時に学生証をご提示ください
曲目
1st STAGE 古典タンゴ
マデルナ | 降る星の如く
ロドリゲス| ラ・クンパルシータ
モーレス | ウノ
ロビーラ | エバリスト・カリエゴに捧ぐ
バルカルセ | ラ・ボルドーナ
ガルデル | わが懐かしのブエノスアイレス
ビジョルド | エル・チョクロ

2nd STAGE ピアソラ プログラム
ブエノスアイレスの夏
ブエノスアイレスの冬
コルドバへのオマージュ
フーガ9
アディオス・ノニーノ

詳細はこちら
http://www.persimmon.or.jp/performance/hosting/20180824130832.html