柿の木日記・
アウトリーチプログラム

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2016年8月11日(木)

未来の音シリーズvol.25 吉田南さんインタビュー

第83回日本音楽コンクール第1位、あわせて聴衆賞ほか各賞の獲得(2014年)をはじめ、国際コンクールでの上位入賞を重ねる吉田南さん。高度なテクニックとともに、ヴァイオリンを美しく存分に鳴らす力強さと聴く者の心をつかむ表現力を備えた高校3年生です。5月の午後、学生たちの活気あふれる桐朋女子高等学校音楽科の学生ホールで、未来の音シリーズの第25回にご出演いただく吉田南さんにお話をうかがいました。

吉田南インタビュー写真1

「ヴァイオリンを始めたのは5歳からです。家族には音楽に関わっている人はいないのですが、私が急に「ヴァイオリンをやりたい」と言い出したらしいです。3歳ぐらいの頃、テレビでヴァイオリンを弾いている人をみて、かっこいいなと思ったようで。でも2年ぐらい無視されていました(笑)。」

 それでもヴァイオリンを習いたいという意思は固く、2年越しの希望がかなって晴れて習い始めることができた吉田さん。しかし始めた頃には意外なエピソードが。

「通常は習い始めると、開放弦を鳴らす練習から始まるものなのですが、私はずっと楽器を持たせてもらえなかったんです。弓を持って丸とか三角を描くように動かす練習をずっとしていました。それがずっと続いたので母が、次のレッスンで楽器を弾かせてもらえなかったら辞めさせようと思ったらしいのですが、そのレッスンで楽器を持たせてもらえました。先生に今聞くと、最初から楽器を持たせるのは危ないと思われたようです。」

楽器を落としたりぶつけたりするかもしれないと心配されるほど活発な子どもだったのかと思いきや、逆に先生にもあいさつできないほど恥ずかしがり屋だったと言います。その性格も演奏の時には一変するようで、子どもの頃からステージ上で緊張することはなかったのだそう。小学校6年生の時には第64回全日本学生音楽コンクール小学校の部で第1位。第66回全日本学生音楽コンクール中学校の部でも第1位を獲得するなど、ヴァイオリンを手にしてからは瞬く間にその才能が花開いていったのがうかがわれます。

そして、中学生まで過ごした奈良の故郷を離れ、桐朋女子高等学校音楽科で学んでいる現在。
音楽を専門に学ぶ学校での生活についてきくと、少し先のテーブルで談笑するグループを指さしながら「あんなかんじです」と笑います。
ステージでは気迫に満ちて堂々とした姿を見せる一方、お話を伺っているとおっとりとされている印象の吉田さんに、普段の生活での様子も伺ってみました。

「映画をみてもすぐに泣いてしまいますし、普段の生活ではけっこう感情的だと言われることが多いです。思ったこともすぐに言ってしまいます。カルテットのメンバーとも練習中によく喧嘩になったりするのですが・・・仲は良いのですが(笑)、けっこう泣いたり怒ったりしながらやっています。」

 演奏活動やコンクールで多忙な中、室内楽にも腰を据えて取り組んでいて、今年で3年目を迎えるシュエット弦楽四重奏団の第一ヴァイオリン奏者として、さらにトリオでも活動しています。
将来、ヴァイオリニストとしてどのような活動をしたいかお聞きしたところ、このような頼もしい言葉が返ってきました。

「ソロも室内楽も、両方を究めたいと思っています。」

今回の「未来の音」公演に吉田さんが提示してくれたのは、超絶技巧を要する難曲かつ名曲が並んだ入魂のプログラム。情感豊かに力強くヴァイオリンを鳴らす吉田さんの魅力も存分に引き出されるプログラムともいえるでしょう。

「関東では初めてのソロ・リサイタルとなります。好きな曲と華やかな曲を集めました。ハデハデなプログラムです(笑)。弾くのは大変そうですが、好きな曲なので楽しんで弾けるように、お客さんにも楽しんでいただけるプログラムにしようと思って組みました。
特に好きな曲はR.シュトラウスのソナタです。今年に入ってから勉強を始めたのですが、心にグッとくる感じが好きです。ヴィエニャフスキのファウスト~はずっと弾いてみたかったのですが、弾く機会がなく、今回初めてコンサートで演奏します。」

今回のピアニスト・五十嵐薫子さんは、トリオのメンバーでもあります。日頃から共に音楽に向き合う仲間でもある五十嵐さんとの共演という面でも楽しみです。最後に、お客様にメッセージをお願いいたします。

「まだまだ勉強中で、ヴァイオリニストと言っていただける立場ではないのですが、お客様の心に寄り添える演奏がしたいと思っています。がんばります。」

吉田南インタビュー写真2

【こぼれ話】
当ホールで来年2月に開催する「《フレッシュ名曲コンサート》めぐろパーシモンホール春のコンサート」に出演していただくピアノの石田啓明さんとは、同じ年の日本音楽コンクールのピアノ部門とヴァイオリン部門それぞれで1位を獲得されました。ジャンルは違っても同じコンクールの出場者同志、仲が良いとのこと。
「とても面白い人で、コンクールの受賞者コンサートが全国5か所であったのですが、その間ずっと一緒でした。年は5歳ぐらい離れていますが、仲良しです。」(楽しいやりとりを思い出している様子で笑いがとまらない吉田さんでした)

 

未来の音vol.25 吉田南[ヴァイオリン]
公演情報はこちら
http://www.persimmon.or.jp/performance/hosting/20160512141406.html