柿の木日記・
アウトリーチプログラム

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2019年10月18日(金)

未来の音vol.29 ヴァイオリニスト大関万結さんインタビュー(1)

未来の音シリーズ第29回にご出演いただく、ヴァイオリンの大関万結さんにお話を伺いました。

小さい頃から自分の演奏をきいてもらうのが大好きだったという大関さん。
2017年に日本音楽コンクールで第1位および聴衆賞を受賞してからの変化、これからの展望。
そして現在の大関万結を表すプログラムと本人も語る、今回の公演の演奏曲について・・・。
たっぷりと語っていただきました。

小さい頃から緊張することはあまりなくて、何よりも人前で弾くことが楽しかった。

― 3歳でヴァイオリンを始めたとのことですが、きっかけは?

大関さん エピソードになるようなことがなくて・・・。あまり記憶はないのですが、お稽古事のひとつとして始めました。

― 物心ついてからは、ヴァイオリンに対してはどう思っていましたか?

大関さん 好き嫌いというよりは、夕方になったらご飯の前に練習する、というように生活の一部でした。どちらかというと自主的に練習をはじめる子どもではなかったのですが、何よりも人前で弾くこと、たとえば発表会で弾いたりすることが楽しくて、ヴァイオリンを続けていたのかもしれません。ドレスを着るのも好きでしたし(笑)。小さい頃から緊張をすることはなくて、今でも、時々はありますが、あまり緊張はしないです。

― 2013年、中学2年生の時に全日本学生音楽コンクール中学校の部全国大会第1位となりましたが、コンクールはよく受けていたのですか?

大関さん 小学校6年生の時に一度受けたぐらいです。現在の師匠でもあるのですが、先生は特にコンクールを受けなさいという方ではないのです。他人に強制されたことはもし結果が出ても身につかないから、自分のしたいことをしなさい、という方針なので。

― 中学までは公立学校で、高校から桐朋女子高等学校音楽科に進まれましたね。その選択に際してもご自分の意志が強かったのですか?

大関さん 全日本学生音楽コンクールで1位をとるまでは、公立の普通高校に通うつもりで勉強をしていたんです。テスト期間中はヴァイオリンそっちのけで1日中勉強・・・みたいな感じでした。コンクールをきっかけに演奏機会をいただくようになったことで、これから先はヴァイオリンに専念したいと考えるようになって。それで先生方に相談して桐朋を受験することになったのですが、決めたのが急すぎてピアノやソルフェージュは必死に詰め込みました・・・(笑)。

日本音楽コンクールでは、最終的な結果はどうであれ、自分の演奏をたくさんのお客様に聴いてもらいたいという思いが強かった。

― 高校3年生の時には日本音楽コンクールで1位、聴衆賞などを受賞されました。この時のことについてお聞かせください。

大関さん こう言ってしまっていいのかわからないのですが・・・絶対にとってやる!と思っていたんですね。ヴァイオリニストとして活動していくためには、日本音楽コンクールという伝統あるコンクールで実績を残しておかなければ、と考えていて・・・。周りからのプレッシャーなどは全く気にならないぐらい、自分自身にプレッシャーをかけていました。高校1年生で受けた時には2次予選で落ちたのですが、その時は本当に悔しくて・・・。本選に行くまでは、聴いていただけるのもやはり関係者が多いので、自分の演奏をたくさんの、色々な方にちゃんとした形で聴いてもらいたいと思ったんです。そのためには絶対に本選に行かないと、と思っていました。

― とても強い気持ちで臨まれたのですね。

大関さん 最終的な結果はどうであれ、とにかく自分の演奏をたくさんのお客様に聴いてもらいたいという思いが強かったです。なのに、ちょうど本選のあたりに台風が来ていて、お客さん来てくれるのかなぁと心配になっちゃって(笑)。

― 自分の演奏は聴き手があってこそ、という気持ちが強いのですね。それでは一般の来場者の投票で決まる「聴衆賞」の受賞は本当にうれしかったのでは?

大関さん 本当にうれしかったですね。お客様に自分の演奏を率直に受け止めていただき、何かしらに心打たれて選んでいただいたのだと思うと、本当にうれしかったです。

― コンクールの後に変化はありましたか?

大関さん 周囲の状況ですとか、見られ方は変わりましたね。ただ、私は変わらないままなので、そのギャップにはちょっとびっくりしました。受賞者発表演奏会に出演するまでは、自分でも「恥ずかしくない演奏をしないと」という気持ちもありましたが、そのコンサートをきっかけに気持ちは軽くなりました。その時に弾いたのが大好きなワックスマンのカルメン幻想曲だったのですが、オーケストラとこの曲を共演できることはめったにないことなので、これを弾けるんだ!といううれしさが勝っていました。それからは、「次」を見るようになりましたね。

― それでは、その「次」の段階である現在の活動についてお聴きしたいと思います。今年の9月にウィーンに留学されるとのことですね。

大関さん ウィーンは私の師匠が学んだ場所でもありますし、昔から憧れの地でした。語学の試験に受かるまでは「ウィーンに留学します」と、人に言えなかったのですが(笑)晴れて言えます。「ウィーンに行ってきます!」

― 「いってらっしゃい!笑」

留学先のウィーンで、色々なものから刺激を受けたい。

― 今後はどのような活動をしていきたいですか?

大関さん 留学してそのまま海外で活躍される方もいらっしゃいますが、私はゆくゆくは日本で活動したいと思っています。それまでは、できる限りウィーンの空気を吸って、色々なものから刺激を受けたいと思います。これまであまり環境を変えてこなかったので、留学は自分の殻を破ることにもなりますし、今まで目にしてこなかったものに触れたいと思います。きっと衝撃だらけだと思います(笑)。

コンクールを受けに行った時などに思うのですが、日本の人たちは本当に上手い人が多くて驚くことも多いのですが、海外の人たちはたとえそれほど技術がなかったとしても「こうしたい、こう弾きたい」という気持ちをすごく強く持っているんですね。なので、コンクールの一次予選を聴いていても本当に楽しいんですよ。「こんな解釈もあるのか」と。そういうのをみると、色々な国の人の演奏を聴いたり、室内楽をしたり、話をしたり・・・そういうことが本当に楽しいんだろうなと思います。

― 今のお話にもありましたが、室内楽にも積極的に取り組みたい?

大関さん 室内楽は好きなのですが、今まであまり機会がなかったので、留学して一番やりたいことのひとつです。私はどちらかというといかにも“ソリスト”という弾き方より、室内楽もなさっている方の弾き方が好きなんです。オケと共演するときもそうですが、「自分」というものももちろんありながらも、色々な対話をしながら音楽を作っていきたいんです。室内楽からはそういったことを学んでいきたいと思います。

【公演情報】
未来の音シリーズ vol.29 大関万結〈ヴァイオリン〉
2020年1月11日(土)15時開演 〈小ホール〉
詳細 https://www.persimmon.or.jp/performance/sponsored/20190624155441.html

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