柿の木日記・
アウトリーチプログラム

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2019年10月26日(土)

未来の音vol.29 ヴァイオリニスト大関万結さんインタビュー(2)

未来の音シリーズ第29回にご出演いただく、ヴァイオリンの大関万結さんインタビュー後半。
今回のリサイタルで演奏する作品について、お話いただきました。

チャレンジだらけのプログラムで、今の自分の手の内を見せてしまったようなものです(笑)。

― 今回のプログラムについて、お話いただけますか?

大関さん この年齢で出すプログラムではないのかなとも思ったのですが…笑。
まず決めたのはショーソン「詩曲」です。ショーソンが好きというか、愛していて。ショーソンの伝記は私の愛読書でもあるのですが、その中で、お世話になっている人にいろいろなことを手紙で報告しているんです。その手紙から彼の内面が良く伺えるのですが、ショーソンはただただ美しいものを求めていた人で、「たとえ1ページでも人の心に染み透る作品を残さずには倒れたくない」と書いています。また、悲観主義者の面もあります。非常に繊細で純粋で、素直で・・・。そんな人間性も魅力的で、ショーソンのそういう所に私自身が辛かった時期に救われたこともあります。

プログラムの順番はすごく悩みました。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番にもとても思い入れがあって。この曲は高校1年の時に受けた日本音楽コンクールの課題曲だったのですが、曲がとても素晴らしいので、こんな未熟なうちに弾いてはいけないのではないかと思い、それから弾いていなかったのです。お客さんの前で弾くのは今回が初めてとなります。ずっと、内面的にもっと成長しないとこれは弾けないなと思っていたのですが、10代最後の演奏会で、また初めてのフル・リサイタルとなるこの機会に、ずっと好きで思い入れが強いこの曲を入れました。
(ちなみに、大関さんの誕生日はモーツァルトと同じ1月27日とのこと。)

エルンストの「夏の名残のばら~」を初めて弾いた時は、泣きながらさらいました(笑)。この曲は、考えられる技術は全部詰め込んだのではないかというぐらい難しいです。それと同時に音楽的にもとても素晴らしく、こんなにハイレベルなところで技術と音楽性が両立されている曲はあまりないのではないかと思います。かなりの挑戦にはなりますが、プログラムに入れました。頑張ります!

モーツァルトのソナタを演奏会で弾くのは初めてですが、この曲は小学校3年生の頃にウィーンとザルツブルクに行った時に、モーツァルトの生家でお土産として買ってきたCDに入っていて、それをずっと聴いてきたのでとても馴染みのある作品です。CDに入っていた演奏は、当時のヴァイオリンで収録されたものでした。当時の調弦は半音ほど低いのですが、それが記憶に染み付いていたので、初めて現代の楽器での演奏を聴いた時はとても違和感があったのを覚えています。

プログラムの最後に選んだラヴェルのソナタは、今まで弾いたことがない曲です。ここまでの曲は何らかの形で私の中にあったものなのですが、ラヴェルのソナタは本当に初めて取り組む作品です。この曲を自分の手の内に入れられれば、またひとつ自分の世界が広がるかなと思っています。新境地への挑戦です。このような曲を並べる演奏会は、なかなか無いのではないかと思います。

― 幼い頃から馴染んできた曲、強い思い入れがある曲、今回初めて取り組む曲などが並んだプログラムは、まさに「今の大関万結」という感じですね。

大関さん はい、日本音楽コンクールを受ける前だったらこのようには並べなかったですね。コンクールが終わってから、自分の個性というものを見つめるようになって。だからなおさら聴いていただきたいと思います、本当に。聴き逃して欲しくないなと(笑)。

― ピアノの入江一雄さんとは?

大関さん 以前、ラジオでショーソンの詩曲を演奏したのが初めての共演でした。この曲は、それぞれが作品についての世界観を持って、言葉にできない対話がないと成り立たないもので、一箇所一箇所について「こうして、ああして」と指示しながらの作り方はできないと思っているのです。入江さんと弾いたときに初めてそれができて、邪念なくこの曲を弾けたのです。このプログラムで行こうと決められたのも、入江さんありきでした。ですので、ヴァイオリンとピアノの対話というところも楽しんでいただきたいと思います。

― プログラム、共演者とも今のベストが集まったリサイタルとも言えますね。

大関さん このプログラムはチャレンジだらけです!もう、これで今の自分の手の内を見せてしまったようなものです(笑)。ぜひ、聴きにきていただきたいと思います。

【公演情報】
未来の音シリーズ vol.29 大関万結〈ヴァイオリン〉
2020年1月11日(土)15時開演 〈小ホール〉
詳細 https://www.persimmon.or.jp/performance/sponsored/20190624155441.html

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